倒産する出版社に就職する方法・第3回

ここは港区の超高層マンションの最上階。

眼前にはグローバルエリートことムーギー・キム。

妹のチャリで夜の帳の中に逃げ込んだはずの俺がどうしてここに?

 

――数日前のこと。

本サイトの管理人こと、子ども2名+代表取締役1名の計3名を扶養する一家の大黒柱こと妻が私に尋ねてきました。

 

「このホームページは本の販売につなげたいわけだよね」

「もちろん! 昨今、SNSの重要性がだな…」

「で、連載書いて少しでも注目してもらって、三五館シンシャの認知度も高めて、出している本も認知してもらう…」

「そうとも! 昨今、ソーシャルメディアマーケティングといってだな…」

「で、今、連載であなたが三五館に入る前のエピソードゼロから始めた。それ何年の話?」

「2000年」

「今、何年よ?」

「2018年」

「あなたが夜の帳に逃げ込んで自分で会社作ろうとしてやっぱり無理で出版社回ってH社長に出会って三五館に入れてもらって三五館で160冊作って三五館が倒産して三五館シンシャ立ち上げて最初の本出して…って書いていくわけ?」

「そう」

「今、エピソードゼロで第2回まで書いて、シンシャで最初の本出すに至るまで、この連載何回かかるのよ?」

「まあ、ここまで紆余曲折あったし、作品1冊1冊にもホントにいろんな思い出あるからなあ。だいたい600回くらい?」

「週2回更新していくとするよね。月8回更新、年で96回。600を96で割ってみ」

「6.25年!」

「頭いいじゃん。2018年の6.25年後だから2024年。何やってる?」

「パリオリンピック!」

「頭いいじゃん。パリオリンピックやってる2024年に、2018年4月刊行の『最強のディズニーレッスン』製作におけるムーギー・キムさんとの秘話、書くわけ?」

「……」

「三五館シンシャの第一弾『最強のディズニーレッスン』製作の裏側にはこんなエピソードがありましたよ。そして絶賛発売中、みなさん買ってください、って? パリオリンピックやってるのに?」

「……」

「本の初動がどれだけ重要かわかってるよね。1日でも早く、一つでも二つでも実売につながるようなことやっていかないといけないと思うの。ホームページに三五館に入る前の苦労話を延々と書いたところで、それって自己満足にすぎないんじゃないかって…………」

 

「わかった」

と静かに言い渡し、心のひとつもわかりあえぬ大人たちを睨む。

 

そして俺は今夜家出の計画を立てる

とにかくもう学校や家には帰りたくない

自分の存在が何なのかさえわからず震えている41の夜

自腹で買ったバイクで走り出す 行き先もわからぬまま

暗い夜の帳の中へ

(つづく)


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