SNS戦略をめぐる対立、および今後の方針について

倒産する出版社に就職する方法・第11回

 

「さ、さ、30!? そんなバカな……なんで?」

 

私は思わず声を荒げました。

SNSメディア情報局局長兼CEO、そしてCFO、COOも顔をそろえ、三五館シンシャの首脳陣が一堂に会し行なわれた経営会議中の出来事です。

6月上旬に尋ねた際に1日毎43ユーザーだったホームページへのアクセス人数が、ここ数日は30前後だという報告がCEOからあがってきたのです。

 

「アクセス人数アップをめざし、連載の更新も従来の週1回から週2回に頻度を上げたじゃないか。なのになぜこれほど激減するんだろう?」

「知らないよ。何も告知してないんだから少なくとも自然に増えてはいかないでしょ」

「……」

 

さらにCEO曰く、18年6月度の月次情報によると、HPページビュー総数も5月と比べて約70%の水準にとどまり、たいへん厳しい数字となっているというのです。

 

「この忙しい中、連載1本書くのにだいたい3時間、どれだけの人的リソースを投下していると思っているんだ。その結果、なんでこんな訪問者が減る? 43が40になったんじゃないんだぞ。43だったのが30って、深刻な減り方でしょう」

「いつ更新するかもわからないんじゃ、見に来られないよね。そもそも見に来てくれてる人以外にこのホームページと連載を知ってもらう機会がないわけだし…」

「えっ? なにが30なの? なにが減ったの?」

CFO(8歳)はこの数字を目の前にしてなお危機感が薄いようです。

「CFOはテーブルに肘をつかない。右手だけで食べるからこぼすんでしょ。左手を添えて食べなさい」

危機に鈍感な経営幹部は厳しく指弾せざるを得ません。

 

既存の訪問ユーザー数の減少に歯止めがかからず、新規ユーザーの獲得にも見込みが立たないままでは、来月7月期は、さらに厳しい状況が予想されます。

 

「なぜこのような事態になったのか……。7月末までの獲得ユーザー数を1日100人と設定し、背水の陣を敷くために目標未達の場合は連載の打ち切りまで公式発表してしまった。このままじゃ、経営責任を問われる重大問題になりかねない……」

「アンパンマンフリカケある?」

COO(4歳)からも新たな問題が提起されますが、現況を把握しながら、あまりに緊張感のない発言に失望が募ります。

「COOはトマト食べなさいよ。小さいの一つでいいから」

私の経営判断に対し、COOは不服そうな顔でこちらを眺めています。

 

「このままアクセス数が低迷したまま7月末を迎えたらどうしよう? 100人行かなければ連載打ち切りはもう宣言しちゃったわけだし……」

「今更なに言ってるのよ。じゃあ、そんな宣言しなければよかったじゃない」

「アンパンマンフリカケない?」

以前より私のポストを虎視眈々とうかがっていたCEOはここぞとばかり牙を剥き、COOは自説に固執し旧態依然とした主張を繰り返します。

人心が離反し、経営陣の対立が浮き彫りになってしまったのです。

 

 

「ここで連載を打ち切れば、アクセスを伸ばす唯一の方法を完全に失う……。それだけはなんとか避けなければ……。場合によっては数字を飾るしかない、か……」

「なによ、数字を飾るって?」

「7月末に数字が行ってなくても、とりあえず『みなさんのおかげで日毎100ユーザーを突破しました』って……」

「粉飾するの?」

「アンパンマンフリカケある?」

「アンパンマンフリカケはないし、粉飾だなんて人聞きが悪い。暫定的に発表しておいて、ユーザー数はあとで追いつくように努力すればいい。アンパンマンフリカケもあとで買えばいい。それほど長くかかる話じゃない。あくまで7月末時点の一時的な措置だよ」

「何、言ってるのよ。そんなこと言ってないで、どうやったらアクセス数を上げられるかを考えて、具体的に実行に移していけばいいじゃない」

「わかった。コンテンツの内容をさらに磨き上げ、火曜・金曜と更新時期を明示することで、いったん去っていった10人の層をもう一度掘り起こせば、基礎票ともいえる40ユーザーをふたたび回復することができるはず」

「そういう問題じゃなくて、この連載を知らない人たちにどうやって知らせていくかを考えたほうがいいんじゃない? とりあえず私のfacebookでこういう連載やってますって告知してみるよ」

「アンパンマンフリカケない?」

「アンパンマンフリカケは現状ない。ただ、俺も知り合いにこの連載のことを知らせて、広げてもらえるようにしてみる。アンパンマンフリカケの件も頼んでみる。7月末に100ユーザーを獲得できるよう、経営陣としても一致結束し総力を挙げてできる限りのことをやっていこう!!!」

 

「アンパンマンフリカケある?」

「……」

(つづく)


やっと会えたね――運命の面接篇<連載第10回>

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