チャンス、到来

倒産する出版社に就職する方法・連載第22回

 

積年の事情を踏まえ、フォレスト出版から送られてきた9月新刊のISBN書籍記号を見て、私は震えたわけです。

500、600、700を無理矢理に獲得した三五館時代。

そして今、環境の激変によりISBN書籍記号を選ぶ余地もなくなった私に向こうからやってきた奇跡。

消息不明だったかつての友人が、唐突にふらりと新しい事務所を訪ねてくれたような。

「やあ、しばらくじゃないか。どうしてた……」

「おお、お前か! どうしたもこうしたもねえよ。三五館潰れちまった。で、今は見てのとおり独りきりだ。でも、まだあきらめたわけじゃねえぞ」

会えると思ってもいなかったし、じつはそんなこともうとっくに忘れてしまっていたのに。向こうから、突然に。

――これが吉兆でないはずがないのです。

 

人間というのは意味を見いだす生き物です。

ぱっと見た瞬間のデジタル時計、前を走っている車のナンバー、さっきコンビニで受け取ったレシートの釣り銭金額。

切り番だったり、ゾロ目だったりすると、ちょっと嬉しかったり、何かの意味があるのではないか、と思いますよね。

「そんなの偶然で、印象に残りやすいから記憶に残るだけだよ」とか分別顔で言っている人だって、手元の紙幣の6桁ナンバーがゾロ目や切り番だったら、どうします? 新しくしたケータイの番号8桁がゾロ目か切り番だったら、どうします?

絶対嬉しいよね? 家に帰ってすぐお母さんに言うよね?

 

江原啓之氏がこんなこと言ってます。

ゾロ目を目にするのは、インスピレーションが鋭いときであり、今冴えているよという合図でもある。さらには思っていることをやるチャンスなんだ、と。

 

ホントか、と。

ホントなのか江原。

ホントにホントのホントなのか江原。

 

ふだん、1mo(マイクロオーラ:国際的に定められたオーラの単位で、現在世界のほとんどの国で公式に用いられている。1000moは1o(オーラ)に該当)も信じていない私も、「ゾロ目との遭遇が、思っていることをやるチャンス」という江原氏のメッセージだけは、切り番を無理矢理にゾロ目の仲間に四捨五入して、信じてみることにしました。

いよいよ私にもチャンスが到来するらしいのです。

 

 

さあ、この「思っていることをやるチャンス」を啓示する書籍記号を授かった新刊こそ、わが社が社運を賭ける『買いものは投票なんだ』です。

(なお、三五館シンシャは今のところすべての刊行物に社運がかかっています。早く一冊一冊に社運をかけなくてもいい体になりたい……)

 

 

――何気ない日々の買いものが、社会とつながっている。私たちの「買える」を「変える」ことが、未来を少しだけよくする方法になる――

 

本作は、全40頁オールカラーでお届けするB5判のメッセージイラストブックで、書画作家の法生(ほう)こと長澤美穂氏と、月間200万アクセスを誇る人気サイト「健康のすすめ」を運営する藤原ひろのぶ氏の共著です。

 

9月14日に見本ができて、20日に「配本」といって取次に搬入され、随時全国の書店に流通していく段取りになっています。

そこから逆算すると、すべての作業が終わるのが8月31日です。

今、この原稿を書いているのが8月9日です。

で、今、仕上がっている原画がゼロページです。

 

 

この状況をどう説明したらいいでしょうか。

 

わかりやすく説明すると、2020年に東京オリンピックが開催される新国立競技場建設で、今スタジアムの基礎工事やっているくらいの状態なのです。

 

ちょっとわかりにくいですかね。

 

もう少しわかりやすく説明すると、2027年をメドに品川―名古屋間を結ぶ営業運転開始を目指しているリニアモーターカーが、今品川駅あたりの掘削工事やっているくらいの状態なのです。

 

まだちょっとわかりにくいですか。

 

もう少しわかりやすく説明すると、カレンダー眺めた瞬間、瞳孔散大しはじめるくらいクソヤベエ。

(つづく)


ISBNからのメッセージ

ある画家の悲劇