腰が痛え

倒産する出版社に就職する方法・第54回

 

腰が痛い。

日常生活に支障をきたすレベルで、猛烈に腰が痛ぇ……。

 

 

発端は先日(2月11日)のことです。

新横浜で開かれる知人の結婚式に向かうため、久しぶりにスーツに革靴で外出しました。総武線と山手線を乗り継いで東京駅に着いた段階で、なにやら腰に違和感が。東京駅から新幹線に乗り、席に座ったところで違和感が確信に変わりました。

 

やつが来た……。

思い起こせば、高校のときと大学のとき、そして社会人になってからも、私は歩行に支障の出るレベルでの腰痛を経験しています。

しかし、少なくともこの10年は腰痛とまったく無縁の生活をしていました。腰痛からもなんの連絡もないので、向こうは向こうで私のことなんか完全に忘れてよろしくやっているものとばかり思っていました。もうカンケーないもんね。この先の人生、お互い別々の道を歩もうね、と。

ところが、そうは問屋が卸さないんですね。

私が会社立ち上げて、初年度から黒字出したということをどこかで聞きつけたのでしょうか。アイドルの地元の元カレみたいに、突如連絡してきたのです。

 

「元気してる?」

 

ぞくっとしました。

嫌な奴が来たな、と。

 

披露宴の最中もじっと座っていると腰が固まりつくように痛くなってくるので、座り方を微妙に変えてみたり、立ってみたり、ちょっと歩いてみたり、ファーストバイトを見に行くふりして床にしゃがみこんでみたり、様子をうかがっていました。しかし、時間の経過とともに症状は悪化の一途をたどります。座っていても、立っていても、しゃがんでいても痛いのです。

 

祝宴が終わり、出口で見送ってくれる新郎新婦とそのご両親に、蒼白な顔色で背筋をぴんと伸ばし角度が5度あるかないかのお辞儀をする私。

「お幸せに」と告げ、能みたいな歩き方で式場を出て行く私。

奇人の退場を見守る新郎新婦。

 

 

ほうほうの体で家に帰り、ネットで調べてみると、腰痛の治し方には諸説あることがわかりました。温めるべしというもの、冷やすべしというもの、とにかく安静にすべしというもの、無理のない範囲で動くべしというもの……。

どうやら定説はないようなので、十数年前に自分が腰痛に対処したときのことを思い出しながら、とにかく早く寝ることにします。

というよりも、座っていても立っていても腰が痛くてたまらないのです。もう寝るしかありません。

午後9時過ぎ、リビングで模造刀を振り回してチャンバラをしつづける長男と次男を、いつもなら「早く寝ろ!」と一喝するところですが、今の私にはそれも叶いません。模造刀を手にした二人の「今のお前ならいつでも殺れる」という不敵な視線におののき、ペンギン歩行で早々に寝室に退散します。

 

ふぅ~~。

布団に入り、仰向けに天井を見上げて深く息を吐き出すと、腰の痛みも一緒に出て行ってくれたかのように腰がずいぶんと楽になりました。やはり安静に体を休めるのがいちばんなのでしょう。

もしかすると、ここ最近忙しく働きすぎている私を見かねて、地元の元カレが心配してきてくれたのかもしれません。「ちょっと休んだほうがいいよ」と。

きっと朝起きたら、夢でも見ていたかのようにこの腰痛がすっかり治っているんじゃないかな。そんなことを考えながら、腰の痛みを忘れた私はすぐに眠りに落ちたのでした。

 

 

 

 

 

 

痛ぇ……痛ぇぇ……腰が痛ぇぇぇ。

 

今、何時だろ?

暗闇の中、寝入ったときとおなじ仰向けのまま、蝋で固められたような腰の鈍痛で私は目を覚ましました。

残念ながら、元カレ、「ちょっと休んだほうがいいよ」なんて生易しい忠告をしに来たんじゃないようです。きちんと恐喝(ゆすり)にきたんですね。

 

痛え……とにかく腰が痛ぇぇぇ……。

パート2につづく