三五館シンシャ

imagine

倒産する出版社に就職する方法・第66回

 

すみません。ちょっとタイムスリップさせていただきます。今から15年前、2004年を描いていた連載第65回から、一気に2019年7月にタイムスリップします。現在に帰るのです。現在に帰って、どうしてもみなさんにお伝えしたいことがあるからです。少々きついGがかかるかと思いますが、鼻つまんで耳から空気抜いてください。気分が悪くなった方はキャビンアテンダントまで。さあ、急降下、不時着します。場所はそのまま変わらず、新潟県十日町近辺です。

 

 

 

『やばい。。。』

新潟県十日町市からのSOSがLINEで送られてきました。2019年6月、先週のことです。

同市で催される予定の「藤原ひろのぶ×ほう×EARTHおじさん個展講演会」開催直前の出来事。送り主はほうこと長澤美穂氏です。

 

『心配。。。』

 

会場に展示するためのイラスト準備が佳境に入りつつあることは知っていました。今回の個展のため、長澤氏が新しい作品を描き下ろすのです。

一方の藤原ひろのぶ氏も新しい試みである「子ども(小学生)向け講演」を開催することになっており、日々通常の講演会をこなしながら、その準備に慌ただしそうです。ついでにいえば、私も7月と8月に予定されている新刊の編集作業の真っ最中なのです。

そんな中、開催直前になって不穏なLINEが届いたのです。

 

『お客さん来ないと思う。。。』

 

石川県白山市で第1回が行なわれ、場所を新潟県十日町市に移し、「十日町産業文化発信館IKOTE」で開催される今回が第2回となります。会場キャパ100名弱、地元開催というプレッシャーが長澤氏の肩に重くのしかかったのでしょう。なんだかひどく弱気になっているのです。

 

『誰も来なかったらどうしよう。。。』

 

「大丈夫。きっと来ますよ」そうLINEに返信しようとして、私はフリーズしました。

 

 

ホント来るか?

 

 

個展を主催する藤原氏、長澤氏と、それを支えるボランティアスタッフの方々、そして三五館シンシャ。この中にイベントの専門家など誰一人としていません。

会場選定から告知、広報、集客、設営まで、それぞれが知恵と時間を持ち寄って作り上げるまさに手作りイベントです。当日どのくらいのお客さんが来てくれるか、いや来るのか来ないのかだってフタを開けるまでわからないのです。

 

想像してみてください。250平米キャパ100名の会場に、誰もいない世界を。国境も宗教も争いもない世界を。

 

 

想像してごらん

客なんて来ないんだと

ほら、簡単でしょう?

IKOTEの中に客なんていないし

僕たちの上には

ただ空があるだけ

さあ想像してごらん

みんながただ今を生きているって

 

 

 

なんて恐ろしいimagineなんでしょうか。

 

当日、お客さんが来てくれるかどうか、私にも皆目わからない。「大丈夫。きっと来ますよ」そんな軽はずみなことは口にできません。

しかし、長澤氏は開催直前に不安になって、こうしてLINEを送ってきているわけです。黙殺するわけにはいきません。

どうするか。

 

 

私はiphoneにたった4文字、一言だけ打ち込み、LINEの送信ボタンを押しました。

 

『祈ります』

(つづく)