倒産する出版社に就職する方法・第37回
「手持ち資金ゼロで、あなたも夢のマンションオーナー!」とか、「和牛に投資で年利20%!」とかあからさまにアヤシイですよね。
「うまい話には裏がある」という格言にはやはり真理があるわけです。
では、これが「家賃を2割下げる方法」だったらどうでしょう?
ホントかよと思いつつも、やってみようと思いませんか?
じつはコレ、2013年に今はなき三五館から出版された本のタイトルなんです。
『家賃を2割下げる方法』、どうです、売れそうじゃありませんか。
……まあ、実際に売れたかどうかはとりあえず措いておいて、本の趣旨は次のとおりです。
・リーマンショック後、全国的にマンションの平均家賃が急落している。
・だから長年住み続けている人はお隣さんより高い家賃を払っているかもしれない。
・それなら家賃を下げる工夫をしてみませんか?
・家賃を下げるための具体的マニュアルあれこれ……
同書は2013年6月に出版されたのですが、制作中このマニュアルどおりにやってみたら、本当に家賃が下がるのかどうか、自分で検証してみたい、と考えていました。
が、同書では「大家さんに家賃下げを持ち出すポイントは契約更新時」と指南しています。本の制作中には、わが家の更新が先だったため、実践を見送っていたのです。
その後、刊行から6カ月を経て、いよいよやってきたわが家の契約更新。
というわけで、『家賃を2割下げる方法』を世に送り出した担当編集者の責務として、同書を実践したら、「家賃が2割下がるのか?」を検証してみることにしたのです。2014年1月のことです。
ちなみにわが家は江東区亀戸、2LDKの一戸建て賃貸で、家賃が14万3000円。2008年に契約していて、2014年1月当時、3度目の更新を迎えていました。
まず、『家賃を2割下げる方法』掲載の交渉文例にそって、「値下げ通知のお願い」を作成。
わが家はリーマンショック以前に契約しているため、諸状況を考慮し(特に考慮してないけど)「2割値下げ」を要求し、不動産屋宛に郵送しました。『家賃を2割下げる方法』を作っておきながら、「10%値下げ」要求では格好がつきません。ここはどうしても2割引きを狙いたい。
ただ、実際に2008年から2013年まで、東京23区におけるマンションの平均家賃は24%も下落しているというデータもあります。「2割下げ」という要求は決して不当なものではないのです。
「家賃を下げてほしい」とお願いする時点で、どうしても「大家さんと気まずくなる」とか、「不動産屋になんか言いにくい」とか思ってしまう方がいるかもしれませんが、家賃の減額交渉は「借地借家法第32条1項」に記された権利なのです(と、『家賃を2割下げる方法』に書いてあるのです)。
家の近所のポストに投函して、さあなんとでも言ってこい、と覚悟を決めた私。
2割もの家賃値下げを要求したわけですから、怒るにせよ、なだめるにせよ、突っぱねるにせよ、すぐ不動産屋から連絡が入ると思うじゃないですか、ふつう。
――2日経過――
まあ、郵送だから到着に1~2日は要するもんな。到着して中身を確認して、上司に報告したりして……。
――4日経過――
社内でどのように対処しようか協議してるんじゃないの。値引きするかしないか、いくらぐらい値引きできるか、どうやって回答しようかとかとか……。
――6日経過――
……。
何にも言ってこねえ。
完全黙秘。
生体反応なし。
て、手ごわい。